2012年5月14日 (月)

商店街の新参者

地元商店街を歩いていたら
「愚痴 自慢 聞きます 無料」
の貼り紙の下、お兄さんが座ってた。
待ち合わせまで、少し時間があった。
どんなサービスもしくはパフォーマンスなのか、興味があった。
だけど私には、彼に語りかけるネタが無い。
後ろ髪を引かれながら、通り過ぎた。
 
悩み、って、改まって考えてはいないけど、不安材料はたくさんある。
契約期間満了になった後の仕事のこと
今後の生き方、身の振り方、老いるということ
お金、身体、母、姉、キンちゃん
そして毎晩のように私を苦しめる数々の言葉・・・
だけど愚痴れない。
愚痴る人って、力がある。自信がある。
自分は間違ってない、悪いのは向こう、という自信。
自分の愚痴を聞いてくれる人がいる、理解者がいる、という自信。
私にはそれがないから、悩みなんか無いことにしている。考えないようにしてる。
そんな自分も、嫌いじゃないけれど。

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2012年4月29日 (日)

椿の人

金曜日、安部の家に泊った。
安部は前回同様キティちゃんの青パジャマを貸してくれた。
着替えようと思って服を脱いだら、そのままベッドに引っ張られた。
事が終わってベッドの上で抱き合っていたら、手を誘導された。
「どうしよう、またこんなになっちゃった」
で、2回目。
その晩は、そのまま裸で寝た。
肩が寒くて目が覚めて、パジャマを着ようと起き上がったら、安部を起こしてしまった。
「なんで着るの?」
引き寄せられて、寝起きで3回目。
身体がまだ目覚めてなくて、あんまり濡れなかったけど、ごりごり来られるのも、嫌いじゃない。
やっとベッドから出て、安部がコーヒーを淹れてくれた。
私もやっとパジャマを着て、濃いめのコーヒーをベッドにもたれながら並んで飲んだ。
飲み終わってキスをして、ベッドに逆戻り。
「俺、壊れた」
こんな壊れ方なら、いいことだ。私もとっくに壊れてる。
安部とは長い付き合いだけど、最近になって、ようやく好みが分かってきた。
ラブホで二時間じゃ分からなかった。
4回目が終わって、お腹を空かせた安部が、パスタを作ってくれた。
ママーの麺に、フレッシュトマトとツナ缶のシンプルパスタ。
休日のブランチにぴったりの素朴な味わいで、鷹の爪が利いてて、美味しかった。
パスタを食べ終えてお風呂を借りた。
「ツバキ、俺が使い切っちゃったから、昨日買った新しいやつ使って」
お風呂場に入ったら、言葉通り赤いボトルが逆さまになってた。
お風呂場は前回よりも、少し汚れてた。
このツバキは、本当に安部が使い切ったのかも。軽く掃除してあげよう。
スポンジを手に取った。
空の浴槽の中に、長い髪の毛を2本発見した。
少しカールした黒髪。私の髪じゃない。
LOCCITANEじゃない別の人が来たんだね。
少しほっとして、少し嬉しくて、少し寂しかった。
安部はモテる。一人じゃない。そして安部の相手も私一人じゃない。
見知らぬ誰かの髪は流して、私は新しいLUXを開けた。
ツバキより、私好みだった。
シャワーから出たら、安部はネットでゴルフ場の空きを探してた。
私はその横でお化粧。
お化粧する姿は見られたくないから、チラッと安部を見た。
安部は真剣な顔でPC画面を見つめてた。
この距離感、いいな。
浴室のドアが開く音が聞こえると、駆けてきた森永さん。
乾燥機で温めたバスタオルをすかさず渡してくれた森永さん。
私がお化粧するのを後ろから抱きついて見たがった森永さん。
幾つかの場面が思い出されたけど、懐かしくはなかった。
まだ思い出と呼ぶには記憶が新しく、
忠犬のようなその行動が、愛おしさから重荷に変わってしまったから。
駅まで送ってもらって、安部と別れた。
9連休、安部が暇を持て余さず楽しく過ごしてくれればいい。
私はやり過ぎて少し痛みが残る体を、この三連休で回復させよう。

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2012年4月28日 (土)

常連志望

馴染みの店があるっていい。
金曜日、安部行きつけの焼鳥屋さんに連れて行ってもらった。
この前、五郎やトクちゃんと来たお店。
常連の安部の周りには、人が集まってくる。
年齢も職業も様々。
エンジニア、ショップ店員、業界人、卸問屋、様々な人達が楽しそうに集う。
私もどこかの常連になりたい。
今のところ、職場近くのコーヒーショップくらい。
「いつものですね?」「いつもありがとうございます」
って言われるのもいいけど、お酒が飲めるお店で馴染みになれたら、もっと楽しいだろうな。
そのためには自分で飲み代を払える稼ぎがないと...。
稼ぎのない私は、いつものように安部にご馳走してもらい、
安部が拾ったタクシーに乗り、
安部のマンションへ一緒に帰った。

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2012年4月25日 (水)

こどもおとな

30も後半になると、子供がいないのは肩身が狭い。
所謂“まっとう”なルートから逸れている感は否めない。
バツイチ子持ちの子の方が、ずっとサバけてて、迷いが無く見える。
でも、消極的選択であれ、これが私の選んだ道。
子供がいない=不幸とは思わない。ようにしている。
様々な生き方や価値観が許されるようになってきた
そのことだけが、同じ過ちを繰り返しながらも、人類が積み重ねてきた歴史の意味なんじゃないのかと思う。
...なんて話が大きくなったところで、スケールをグッと矮小にして、森永さんとの事。
今回の一件で、「子供が出来て一人前」というフレーズは、あながち間違いじゃないと感じた。
もちろん、子供がいても幼稚な人はいるし、
子供がいなくてもしっかりした人もいる。
ただ、森永さんは子供。私も子供。
短くない年数を生きてはいるから、それなりの知識はあるけど、基本、自分ありき。
森永さんには、一人っ子とか、田舎の長男とか、やっと授かった子とか、おばあちゃん子とか、一人暮らしが長いとか...
諸々の追加条件はあるけれど、自分のためだけに生きていればいいというのは、私とて同じ。
私の方が、本も映画もおしゃべりも好きだから、耳年増でタチが悪いかも。
我慢とか、忍耐とか、許容とか
奉仕とか、慈愛とか、献身とか、
義務とか、糧とか、責任とか、
そういうものを抱えて、歩いて、人は大人としての体力を付けていくのかな。
子供がいない私は、せめて社会人生活の中で、大人力を身に着けなくちゃいけないな。
契約期間満了で失職することも、変わった上司に仕えなきゃいけないことも、大人力養成の一環だ。
そんな事を考えていたら、森永さんからメールが来た。

次から次へと試練が。
通常の仕事、ルーチンは、問題ないんだけど、その他諸々ね。
やってられないけど、やらなきゃならないから。
けど、自分のためだと怠けちゃうから、勝手におよよのためって言い聞かせてがんばってます。
勝手に使っちゃってごめんなさい。
でもその分、およよがハッピーになれるよ、きっと。
それがいいな。それだけでいい。
つーか、そうでもないとやってなれないや。
おやすみおよよ。明日は本社だ。ふうぅ。

10年前の私なら、感動してたかもしれない。
でも、社会に揉まれた今となっては、違和感しか覚えない。
大人の男ぶった、お子様にしか思えない。
森永さんの優しさが、頑張りが、何のご利益もない自己愛とすり替えに感じてしまう。
誰だって働いてる。
生きていくのは楽じゃない。
何のために働くか、どうやってモチベーションを上げるかは、その人次第。
私が森永さんの役に立っているのなら、嬉しい。
だけど、だからって、森永さんの労働で私がハッピーにはならない。
私のためでも構わないけど、私にカミングアウトされても困る。
だって実際、次の仕事はあてがないし、隣の席の上司は細かいし、胃が痛くなる日々。
そんな折、キンちゃんがのし袋と筒を持って帰ってきた。
会社から表彰されて、賞状と20万円の目録をもらったそうだ。
溜息ついて、不機嫌になって、ジャンクフードをやけ食いしながらも、何も言わずに結果を出したキンちゃんを、尊敬する。
出会い系にハマってても、
20万円は職場のみんなと飲んで使うと言われても、
百万回の「愛してる」をくれる森永さんより、キンちゃんのそばにいる方が、私には幸せ。

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2012年4月19日 (木)

恋の風邪(後編)

森永さんが風邪を引いた。
森永さんからのメールは続いた。
私は無視し続け、週が明けた。

月曜恒例ミーティングの準備…。
本来、◯◯さんなんだが。
先週、やって見せて引き継いだんだが。
こんなに丁寧な引き継ぎ聞いたことないんだが。
そんな◯◯さん、風邪気味で休むとさっき電話あり。熱が37度あると。
37度4分で鼻声の俺が会社で電話対応(苦笑)。
ココに来てから、月曜に突発で休まないのが俺のプライドだった。
実際、それはやり通した。
◯◯さんが休みなら、主任がミーティングの司会のはず。
その主任、土日に熱が出て、もう熱は下がったけど、病院に行くから休むとさっき電話あり。
土日寝込んで、熱が下がりきらずに病院にもいけなかった俺が会社で電話対応(苦笑)。
いや、誰も悪くはないさきっとね。
ま、現実問題、早退できなくなった。
あとは気力だ。
でも…これだけ続くと、悪意を感じる…などなどネガティブな感情がわいてくるが、知らん知らん。
そして、むしろ非常電源に切り替わった気がして力が出てきた気がするよ(笑)。
およよは元気でいて。
風邪が流行ってるのかも。気をつけて。


このメール、何?私にどうしてほしいの?何を伝えたいの?
褒めてほしいの?励ましてほしいの?
決算期、37度の熱なら出勤するよ。
私だってそうしてきたよ。
だからって、誰かにアピールはしなかったけどね。
でも、まぁ、森永さん的にはかなり頑張ってるってことなんだろう。
仕方無い。「がんばって」一言だけ返した。二週間ぶりのメール。

やった。およよが無事で良かった。ホントに良かった。

優しいな、とは思えなかった。
は?って思ってしまった。

鼻声と涙目は隠すことができなかったけど、ポーカーフェイスで一日やり遂げたよ…
多少ボロは出ちゃったかな。
ちょっと遅くなっちゃったけどね。
いろいろうまく行かなくて、何かの試練?なんて思うけど、ま、そんなこともあるね。
およよから元気をもらったから、もうきっと大丈夫。
風邪も治るし出張もきっとうまくいくね。
…なんて言い聞かせてみたり。ポジティブ、ポジティブ。
本来自分の中から絞り出す元気。分けてくれてありがとうおよよ。
…本気でおよよが無事でよかった。
怖くて聞けなかった。
俺的には、ぶっちゃけ精神的にとっても救われた。連絡ありがとう。
とにかく、ひとまず早く寝て風邪を治さなきゃ。
今日はよく眠れるかも。
今さら新しい症状の咳が出始めたり、定期的に悪寒が走るけど気にしない。
きっと大丈夫。ホントにありがとう。
何というか…例えば地に足がついた。
ごめん、伝えきれないや(苦笑)。ありがとう。


また病アピール。
大した風邪じゃないのに、こういうの、本当に嫌いなんだけどなぁ。

日付が変わる前に布団に入れた。
で、現金なもんで、熱は下がって、36度フラット。
風呂上がり間もないのに。
あの悪い環境で一日過ごしたのに。
ありがとうおよよ。おやすみ。


大した風邪じゃなかったってことだよ。
まったく、オーバーなんだから。

おはよ。スーツのジャケットにダウン。真冬よりも重装備。
寝起きに念のため熱を測って、35度台だったけど、変わらず寒いので。
周りから浮いちゃってるのは承知の上。
今日は早く帰れるといいな。


この暖かさにダウンって...カッコ悪い。
35度なら風邪じゃないのに、まだ病アピール?
でも、ま、良くなってなにより。
気が付けば、私の恋愛温度も35度。
悪寒と吐き気と関節痛。
ごめんね。でも、もう、無理。
この症状は、多分治らない。

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2012年4月18日 (水)

恋の風邪(前編)

森永さんからは毎日何度もメールが来てるけど、一度も返事をしていない。
最後に会った日の晩

昨日はありがと。
全然力になれず、気を紛らすこともしてやれず歯がゆくて、
駅では逆におよよに気を遣わせちゃった。ありがと。


力になってくれなくていい。
ただ、自力で、森永さん自身の重みを支えてほしいだけなのに。
だけど森永さんには伝わっていない。
森永さんは、優しい自分に、モテる自分に、未だ陶酔中。

おはよう。今朝は熊本さんと会った。
小走りの足音が隣で止まるから誰かと思ったら熊本さんだった。
誰かに見られたら、噂になるじゃんね。
熊本さんが心配だ。
んじゃ行ってきます。


確かに熊本ちゃんは森永さんのことが好き。
だけど、こんな心配は思い上がりだよ。
熊本ちゃんに失礼だよ。

明日は継続の苦情対応。
来週は三重へ日帰り出張。
またしても専門外。不安なし…と言ったらウソ。
前日はおよよに会いたい。一緒にいて欲しい。


結局自分の心配か...。

熊本さんが、今日、突発で休んだ。
4月になって有休が出たから休職にならずにギリギリセーフ。
てか、だから休んだんだと思う。
出張はともかく、悪いことばかりでちょっびりナーバス。
でもこれら些細なことより、およよのことが心配。
俺には何もしてあげられないけど、
不甲斐ない自分に嫌気が差して挫けそうだけど、
大切に思っている。
またおよよを笑顔にしたいって、
ちょっとだけでも笑顔にしたいって思っている。
安心感を持たせてあげたいとかいろいろ思っている。
なのにごめんね。おやすみおよよ。
何故か送信エラーとなり、再送もできず、
しかも消えてしまったメールを打ち直して再送。
見えない力に邪魔されてる…。
いかん、ネガティブだ。ポジティブにポジティブに。
明日は晴れるさ。


思ってる事を全て話すのが善だと思っているのかな。
これって、私に聞いてほしいこと?ただの独り言?
こんなメールもらって、笑顔にはなれないよ。安心感なんて持てないよ。

酒盛り開始。良かったらおいで。てか、出来れば来て。

金曜の夜に、家で一人飲みするのが森永さんの常。
糖質ゼロの新ジャンルと、380円の安ワイン。
友達少ないから、滅多に飲みに行くことは無い。
話し相手も、愚痴る相手も、自慢話する相手もいない一人飲み。
なんだか可哀想。
だけど、ここでメールしたら元の木阿弥。
私は友達と飲んでたし、返信しなかった。
そして土曜の朝

やっちゃった。
最悪のタイミングで風邪ひいた。
動くのツラい。けどリハビリだけは行かなきゃ。


昨日、酔い潰れて布団も掛けずに寝ちゃったんだろうな。
ちなみにリハビリとは、腰痛防止のため、整骨院で受ける電気治療のこと。

リハビリどころか、冷蔵庫が遠い。
起きた時よりみるみる悪化していく。
今までにこんなことない。ちょっと怖い。
熱を測ったら37度4分。まだ微熱だね。
あとは、頭痛と関節痛と、いつもの喉。食欲なし。
寝ればなんとかなるだろ。
なるよね(笑)?おやすみなさい。
でも、うとうとすると関節痛がピリッと邪魔するんだよね。
およよは元気でいてね。

こういう病アピール、嫌い。
私が風邪引いて辛い時、布袋のライブに連れ出したくせに、37度くらいで弱音吐くな。
40年以上生きてきて「こんなことない」って、本当?
とは言え、ちょっと気になる。
男子は熱や痛みに弱いもの。
風邪薬やスポーツドリンクやレトルトお粥を差し入れようかな...
でも、森永さんには独り立ちしてもらわなきなゃいけない。
心を鬼にして無視し続けた。
ーつづくー

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2012年4月16日 (月)

歌舞伎町の夜

金曜日、新しい飲み友達推薦の中華料理屋さんに連れて行ってもらった。
間口の狭い雑居ビル、日本語が下手で愛想無しの中国人店員、ハンガーも無い店内…うーん、これぞ歌舞伎町!
「改装して綺麗になっちゃったなぁ」
「前はこんな立派なメニューじゃなかったんだけどなぁ」
と彼は残念そう。
メニューに無い料理も中国語混じりでオーダーしていた。 さすが国際部。
アジア担当の彼が「本場の味」と言うだけあって、料理はどれも美味しかった。
特に、唐辛子まみれで山椒まみれの鍋料理は、未体験の痺れる美味しさ。
新しいお店って、楽しい。
生ビール飲んで、青島ビール飲んで、紹興酒飲んで。
彼はおしゃべり。話は彼主導。
異業種だし、営業だから、仕事の話も面白い。
お腹いっぱい食べて店を出た。
彼の方から手を取ってきた。
彼の手は温かい。
ときめきと言うよりは、暖を取る手繋ぎ。
末端冷え性の私には、それもまたあり。
「どこ行こうか」
歌舞伎町を奥へと進み、彼が立ち止まった。
「この先、ホテルがあるけど...」
やはりそうきたか。
歌舞伎町で飲もうと言われた時から、予感はしてた。
行ってもいいかな。
でも、裸になるにはお腹が張り過ぎた。
満腹だと、私、あまりHな気分にならない。
勢い付けるほど酔ってもいない。
「今日はハシゴしないの?」
「だってもう食べられないでしょ?」
「そうだけど、肝臓は空いてるよ」
そんな事を話しながら、ホテル街を前に立ち止まるいい大人二人。
それを俯瞰する私。
なんだか初々しくて可笑しい。
「ここで立ってるのもなんだから、歩かない?」
それを柔らかい拒否と受け取ったのか、彼は二軒目のお店を提案してくれた。
そこはメキシカンバー。丁度ライブが終わるところだった。
一軒目から仕事の電話が入っていた彼のもとに、二軒目に着くなりまた電話。
彼は外に出た。
相席で座った隣の席には、異国の美女二人。
一人で手持ち無沙汰だし、話しかけてみた。
"Where do you come from?"
二人はカナダ人で、一人はイギリス在住、もう一人はなんと山形在住だった。
彼が戻ってからも、にわか英会話教室。
久しぶりに話す英語は楽しかった。
山形GuysはSuper Shyだと彼女が言うから、六本木に行ったら?と提案した。
六本木にはどう行くの?
大江戸ラインで行けるよ。
あなたも一緒にLong Nightを過ごさない?
いやいや、帰らなきゃ。
そんなやりとりをし、Facebookのアカウントを教えてもらい、別れた。
終電が迫ってきて、私と彼も店を出た。
駅まで手を繋いで歩いた。
私が乗る電車のホームまで送ってもらった。
エスカレーターで腰を引き寄せられてキスをした。
山椒の清涼感が残ってた。
新しい友、新しいお店、新しい味、新しい出会い…街に出ればまだまだ新しい事がある。
ホテルに行くより刺激的な夜だった。

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2012年4月 2日 (月)

一周年

4月1日
衝撃のキスから丸一年。
森永さんへの恋心は、すっかり冷めている。
あのときめきは、あの高鳴りは、なんだったんだろう。
どこへ消えちゃったんだろう。
たった一年で、熱が冷めただけじゃなく、マイナスに行ってしまった。

一緒に働いている時、森永さんは気になる存在だった。
初めて一緒に食事した日の帰り道、森永さんの横顔を見ながら「キスしたい」「キスして」って強く念じたことを覚えてる。
クールに見えて、近付くとこの上なく優しい森永さんを好きになった。
だけど今は、嫌なところばかりが目についてしまう。
漫画は読むのに本は全く読まないところ
新聞を取っているのに何年も読んでないところ
新聞は読まないのに安売りチラシだけはチェックするところ
勉強好きと言いながら、何の勉強もしていないところ
10代の頃に好きだった音楽だけを聴き続けているところ
好きな音楽を聴くと、ノリノリで鼻歌を歌い出すところ
古着とアメカジを貫いているところ
真ん中分けのツーブロックカットを変えないところ
スーツは量販店でしか買わないところ
一年中夏物スーツを着ているところ
スーツにターコイズアクセサリーを合わせるところ
一年中ノージャケットなところ
ノーアイロンシャツしか着ないところ、一年中腕まくりをしているところ
人見知りで新しい友達を作らないところ
同僚とは飲みに行かないところ
地元でばかり飲むところ
すぐに地元価格と比べるところ
一番安いお酒ばかり注文するところ
ビールの一口目に「ぷし 」って言うところ
バルやバーに行く前は、コンビニで買ったビールを飲んでから行くところ
1円でも安い物を求めてスーパーをハシゴするところ
何でも冷凍庫にストックするところ
クレジットカードを持ってないところ
大っきなニキビが出来たと写メを送ってくるところ
翌朝そのニキビを針で潰したと報告メールを送ってくるところ
・・・些細なことばかり。
最初は気にならなかったこと。
ある人にとっては美点にもなり得ること。
それが、こんなに列挙してしまえるくらい、私の気持ちは離れてしまった。

森永さんと付き合って、知らなかった自分が見えてきた。
年齢も、顔も、体型も、収入も、好みは無い。
だけど、本を読まない人はダメ
口下手な人はダメ
チャレンジ精神の無い人はダメ
そういう人は、つまらない。
つまらないから、尊敬できない。
尊敬できないから、愛せない。
そんな思いが爆発した。

今の仕事が、契約期間満了で終わることになった。
その日、森永さんと地元で会う約束をしていた。
私はブルーに陥ってた。
正直に「あーもーどうしよう。また就活かぁ…」と溜息をついた。
森永さんは私の気を紛らわせようと、自分から話題を探して話してくれた。
その優しさは伝わった。分かってた。
でも、正直に言わせてもらえば(言えないけど)、面白くもなければ返事のしようもない職場ネタばかりで、「ふーん。で?」って思ってしまった。
話を膨らます元気も無く、私はまた溜息をついた。
会話は途切れがちになり、私から「もう帰るね」と切り上げた。
森永さんに気を遣う余裕はなかった。一人になりたかった。
「送ってく。送らせて?」
森永さんはいつもの小首を傾げる仕草。
「今日は電車で帰りたいから、駅まで送って」
本当はお店の前でバイバイしたかったけど、森永さんが拗ねると面倒だから、せめてもの譲歩。
改札前で別れたはずが、森永さんが中までついて来た。
「一緒に電車乗っていい?」
また小首を傾げて上目遣い。やめてよそれ...
「一人で帰りたいの」と振り切った。
そのままエスカレーターに乗ろうとした時、何かを感じて振り向いた。
森永さんは人が行き交う中、立ちすくみ、うなだれて目線を落とし、口をとがらせてしょぼくれていた。
ゾッとした。気持ち悪い、とまで思ってしまった。
このまま振り切って逃げたかったけど、相手をする方が後々楽だと判断した。
戻って森永さんの腕を取った。
「なんで森永さんが落ち込むの?励ます側でしょ?」
森永さんの腕を引っ張り、改札を出た。
「やっぱり歩いて帰るよ。送って」
十分飲んだ後だったけど、飲まずにいられず、そのまま駅前のコンビニに入った。
「私は氷結。森永さんは?」
「ハイボールにする」
「これ、美味しそうだよ」
「でも50円高い」
イラッとした。
「いいじゃん50円くらい。50円分美味しいよ」
私は高い方のハイボールを選び、サッサと会計した。
歩きながら飲もうとしたら、缶を奪われた。
森永さんが栓を開けてくれた。
その優しさは伝わった。分かってた。
それでもイラッとしてしまった。
お酒でイライラを抑えつけ、いつもの神社まで送ってもらった。
バイバイして繋いだ手を離したら、森永さんはまたも小首を傾げ、両手を広げ、ハグを待っていた。
うんざりだったけど、断るのも面倒で、ハグに応じた。
「なんか、ごめんね。勉強とか仕事なら得意なんだけど、女性の気持ちって分からなくて…」
40になって勉強得意って…
女心が分からないって…
カッコ悪いよ。恥ずかしいよ。そうであっても言っちゃダメだよ。
森永さんは、十代で成長が止まってるんだな。
可愛い人。だけど、私には無理。
「およよなら大丈夫。すぐに仕事見付かるし、見付からなくても、およよ一人くらい俺が面倒みるから」
面倒なんてみてほしくない。
そういう言葉が欲しい訳じゃない。
面倒なのは、森永さん、あなた。
早く一人になりたかったくて、抱擁が終わるのを待っていた。

それ以来、森永さんとは連絡を取ってない。
森永さんからは一日に何度もメールが来るけど、返事はしていない。
森永さんに彼女がいたり、妻がいたら、別れる必要はない。
そうだとしたら、こんなに嫌いになっていなかったとも思う。
森永さんは私に「もっと」と「ずっと」を求めてる。
私と暮らしたい、結婚したい、私との子供が欲しいと言っている。
だからつい、長く付き合える人かどうかを考えてしまう。
考えたから、楽しめなくなった。
そして、出た結果は「無理」

このままフェードアウトでもいいかな。
そんな、年度初め。

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2012年3月29日 (木)

愉快な仲間達

安部宅にお泊りしてる時、トクちゃんの話になった。
「怒ってるんじゃなくて、安部にかまってほしいんだよ」と私が言った。
安部はすぐに携帯を取り出し、トクちゃん、五郎、タク、私に一斉送信でメールを送った。
「来週、焼鳥でもどう?」
間髪入れず、トクちゃんから私だけにメールが入った。
「安部からメール来たね。言ってた通り(笑)。一人で寂しいんだろうね。」
まさか私の隣に安部がいるとは、まさか私が安部の家にいるとは、思ってもみないよね。
私の差し金だけど、安部に誘われて喜んでる様子。これで和解かな。
みんなから返信があり、予定もぴったり合って、週明けに飲むことが決定した。
つまりは、五郎と再びの再会が決定した。
前回は三年半ぶりで、かなりドキドキだったけど、一度会ってしまえば大分気が楽。
とは言え、前日はパックをし、髪を巻いて、買ったばかりの春色スカートをはいていった。

昔は5人でよく飲んだ。
出会った時は、安部と五郎が既婚者だったけど、逆転したり
安部とタクは二人の子持ちになったり
私以外のみんなには役職が付いたり
マンションを買ったり、売ったり、戸建てを買ったり。
状況は変わったけど、5人集まれば昔のノリ。
タクは私を褒め上げ、安部はトクちゃんをいじり、トクちゃんがぶーぶー言うのを五郎が茶化す。
大した話もしていないのに、飲んで、笑って、また飲んで…うんうん、この感じ。
トクちゃんが言った。
「安部、メールくれた時、何してたの?」
定時で帰って私と家にいた。
「仕事だよ」
「金曜日の夜で、寂しかったんでしょ?」
寂しそうな人に寂しいかどうか聞くなんて、トクちゃんてば、デリカシーが無い。
少なくともその晩は、寂しさを感じる暇が無いほど、体を重ねてたんだけど。
安部は素知らぬ顔で「寂しいよ」と答えてた。
素直なトクちゃんは疑いもせず、「友達を大事にしなよ!」と満足げ。
トクちゃんは「今、恋してる」から、浮き足立ってる。
トクちゃんが熱を上げてるジムのコーチと、どうかなるとは思えないけど、楽しそうで何より。
不妊治療の結果に一喜一憂していた時より、ずっと健全だと私には思える。
「およよは結婚してから、恋したことある?」
「五郎と安部ならどっちがいい?」
トクちゃんは真っ直ぐに、まっとうに生きている。
だから屈託なく、こんな質問が出来るんだ。
気の利いた返しが思い付かなず「好きなのはタク」と安易な答えで逃げてしまった。
タクは期待通りのリアクションで小躍りして、盛り上げてくれた。
奥さんにお財布を握られて、痛風持ちで、お腹も出て、セックスレスで…中年サラリーマンへの道をひた走るタク。
みんなでいると道化役だけど、一番幸せでまともな社会人。
私も、安部も、五郎も、一時の高揚と引き換えに、人には言えない嘘や裏切りや不貞を繰り返してる。
だからいつまでもふらふらと恋やら愛やらを追い求めて、数だけ重ねて、年だけ重ねて、埋まらない寂しさを持て余すはめになる。
体を重ねるのもいいけど、久しぶりに仲間とわいわい飲んで、楽しい夜だった。

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2012年3月25日 (日)

バケツの中身

お泊りの日。
安部に待ち合わせ場所を聞いたら
「定時で上がるから、会社まで来て。一緒に帰ろう」
定時になんて上がれるの?
会社の人に見られたらどうするの?
色々心配はあったけど、安部は全てクリアした。
息を切らせて約束の時間に現れ、一緒に地下鉄に乗り、途中下車。
エスカレーターでは腰に手を回され、髪にキスされた。
渋い居酒屋さんで軽く夕飯を済ませ、スーパーへ。
二次会用の食材と、明日の朝用のコーヒー豆を安部が選んだ。
その後、スーパーの隣にあるドラッグストアで歯ブラシ、シャンプー、リンスを買ってくれた。
本当に買って欲しいのはゴムだけど、それは言えなかった。
レジ袋を抱えてタクシーに乗り、安部のマンションへ。
安部はTシャツとジーンズに着替え、手早くカプレーゼと冷奴を用意してくれた。
私の手土産のシャブリで再び乾杯。
ワインを空け、日本酒を飲み、Hになだれこんだ。
安部のベッドはダブルサイズ。
ちょっと狭いし、軋むけど、充分だった。
「付けて」と頼んだら、安部は枕の下からゴムを取り出した。
「さっき買ったんだ」と笑ってたけど、ホントかな。
最近頻繁にしているせいか、回を重ねる毎に安部との相性が良くなる感じ。
一回果てて、間を置かずにもう一回。
今度は生だった。
勢いづいてたし、生理が終わったばっかりだったし、まぁいいか、って思ってしまった。
「およよ、すっごくいい」
「およよの中、こうなってるんだ…今まで知らなかった」
「およよ、大好き」
「結婚したら毎晩こんなかな」
その後更に1回、夜中に1回、朝2回、がっつり6回もしてしまった。
安部が洗い立てのパジャマを貸してくれたけど、パジャマどころか、パンツを履いてる暇すらなかった。
朝は安部がコーヒーを淹れてくれた。濃くて美味しかった。
で、ようやくシャワーを借りた。
温めとく、と安部はお湯を流しておいてくれた。
昨日安部が買ってくれたTSUBAKIで髪を洗った。
お風呂場にはサクセスが置いてあった。
あぁ、だからわざわざ女性用を買ってくれたのね。
一宿一飯の恩義で、近眼の安部では気付かないであろう汚れを掃除しておいた。
バスタオルを巻いてリビングに戻り、「ドライヤー貸して」と言った。
安部はすぐに立ち上がり、洗面台の下の扉から、ドライヤーを出してくれた。
ざっと乾かして、ドライヤーを畳み、コードを巻き付け、元の場所に返した。
ら。
黄色いバケツの中に、LOCCITANEのシャンプーと、トラベル用の歯ブラシケースが2つ入ってた。
ドライヤーを戻してすぐに扉を閉めたけど。
これは。うん、これは。
私より前に、誰かが泊まってる。
トクちゃんが言ってたバツイチ子持ちの人かな。
LOCCITANEは阿部じゃなく、女性が買って持ってきたんだろう。
使い切ってないから、泊まったのは数回。
捨ててはないから、また来る可能性が残ってる。
歯ブラシケースの一つは彼女の物として、もう一つは誰の物?
うーん。
髪は乾いたのに、頃は湿っぽい。
二つの枕、枕の下のゴム、アロマオイル、ムーディーなライト…
うーん、うーん。
リビングに戻ると、安部がタバコをふかしながら、テレビを見ていた。
ま、いっか。
安部だもん。女好きだもん。寂しいんだもん。
惚れるし、誘うし、連れ込むさ。
「俺との未来、考えられない?」
「結婚したらマンション買おう」
なんて言われて困ってたけど、困る必要ないんだ。
私が感じる不安や不一致は、阿部だって感じてる。
その上で、その瞬間に感じた高まりを、より気持ち良くなるための言葉を、安部は口にしているだけなんだ。
困らなくていい。私も今を楽しめばいい。
後には何も残らない、今この瞬間を。

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